まとめ:スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン
アリストテレスの人を説得する方法
スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは、大昔にアリストテレスが考案した、人を説得する5ステップを満足している。
1 聞き手の注意を引くストーリーやメッセージを提出する。
2 解決あるいは回答が必要な問題あるいは疑問を提出する。
3 提出した問題に対する解答を提出する。
4 提出した解答で得られるメリットを、具体的に記述する。
5 行動を呼びかける。ジョブズの場合は「今すぐここを出て買ってくれ」といったところだろう。
「なぜこれが必要なのか」──この1文だけで敵役が導入できる。
ジョブズはこの質問からスタートして業界の現状を語り(ブラウザーについてでもオペレーティングシステムについてでもデジタル音楽についてでも)、解決策を提示するという次の段階のお膳立てをしてしまう。
問題提起は長い必要などない。
ジョブズが敵役の導入に使う時間はせいぜい2、3分だ。やろうと思えば30秒でも可能。以下の質問、4つすべてに答えられる1文を作ればいいのだ。
(1)何をするのか?
(2)どの問題を解決しようとしているのか?
(3)ほかとはどう違うのか?
(4)なぜ気にかける必要があるのか?「ランゲージライン社とは、英語が話せない顧客と接点を持ちたいと望む企業のために電話通訳サービスを提供する世界最大のプロバイダーです(すること)。米国には、平均して23秒にひとり、英語を話せない人が入国します(問題)。その人が病院や銀行、保険会社、救急などに電話をしたとき、ランゲージラインの通訳が対応するわけです(違い)。当社を使っていただければ、150カ国で顧客や患者、見込み客と話をすることができます(なぜ気にかける必要があるのか)」
話す題材に対して情熱を持つことが肝要
講演の祖、アリストテレスは、話す題材に対して情熱を持つことが肝要だとした。しかし、トピックに対する興奮を表現するコミュニケーターはほとんどいない。スティーブ・ジョブズは、毎回、くらくらするほどの熱情を感じさせる。彼の活力と熱意には誰しも魅了されると、元社員はもとより、ジャーナリストにもそう言う人がいる。だから、パッションステートメントを考えてみよう。数分ですむ。次の文を完成させればいいのだ。
「この製品(会社、構想、未来など)が私は大好きだ。なぜなら……」。パッションステートメントができたら、恥ずかしがらず、胸をはってみんなに伝えよう。
キーメッセージとその裏付けを考えるときメタファーが一番大事
キーメッセージとその裏付けを考えるとき、どう表現すれば効果的であるかも考えよう。
アリストテレスは、なんといってもメタファーが一番大事だとした。メタファーとはたとえの一種で、本来は別のものを表す言葉で何かを表現し、両者の比較をするもの。人々の意識に働きかけるツールとして、マーケティングや広告、広報などで広く使われている。
できれば、意表を突くメタファーがいい。おもしろい例を紹介しよう。カスペルスキーがアンチウイルスの新製品を出したときに使ったメタファーだ。
新聞の全面広告で(私が見たのはUSAトゥデイ紙だった)、中世の鎧よろいに身を包んだ兵士が背中を見せてとぼとぼと歩み去ってゆくところが描かれていた。ヘッドラインは「そんなにがっかりするなよ。昔はすごかったんだからさ」である。つまり、カスペルスキーと競合する企業が出している今のインターネット・セキュリティ技術は重くて動きにくい中世の鎧であり、現代の軍事技術とは比較にもならないと言っているわけだ。
新しい概念を理解してもらいたい場合に効果的なのがアナロジー
このメタファーとよく似ており、同じく効果的なのがアナロジーである。アナロジーとは異なるふたつを比較することにより、その類似性を際立たせる手法だ。新しい概念を理解してもらいたい場合などに役立つ。「マイクロプロセッサーはコンピューターの頭脳です」というアナロジーは、インテルのような企業にぴったりだろう。
※PS(2026年9月3日):最近は「新規ブログ」で発信しています。
