だれかの自殺が一面記事で報じられた直後には、飛行機が驚くべき率で墜落する
だれかの自殺が一面記事で報じられた直後には、飛行機(自家用飛行機・法人のジェット機・提起旅客機のいずれも)、が驚くべき率で墜落する。
ちょっと信じられないことですが、研究で証明されているようです。
» The Influence of Suggestion on Suicide: Substantive and Theoretical Implications of the Werther Effect
突然ですが、あなたはウェルテル効果を知っていますか?
ドイツの文豪ゲーテは『若きウェルテルの悩み』と題する小説を出版しました。主人公ウェルテルの自殺を扱ったこの本は、驚異的な影響を及ぼしました。
その本でゲーテは一躍有名になっただけではなく、ヨーロッパ中でウェルテルをまねた自殺が相次いだのです。
» ウェルテル効果 – wikipedia
- 自殺が広く報じられると飛行機の墜落が急増する。
- 主人公の自殺を扱う本がヒットすると、自殺者が増える。
これらに共通することは『影響力』です。
最近、影響力の武器という本を読んだのですが、かなり興味深い本だったのでご紹介します。
セールスマン、募金勧誘者、広告主など承諾誘導のプロの世界に潜入。彼らのテクニックや方略から「承諾」についての人間心理のメカニズムを解明。情報の氾濫する現代生活で、だまされない賢い消費者になると共に、プロの手口から人を説得するやり方を学ぶ。
人は気づかないうちに影響を受けています。
本の中では、人から同意や承諾を得る方法が解説されています。これは行動心理学の本ですが、商品を売ることが仕事の人、とくにセールスマンやマーケターにオススメです。
今回は、本で紹介されていた心理学のうち、3つをピックアップしてみます。
一貫性の原理
身近な例としては、競馬場で馬券を買う人です。馬券を買った直後では、買う直前より、自分が賭けた馬の勝つ可能性を高く見積もることが証明されています。
なお、一貫性の原理は、ローボールテクニックと組み合わせることで、高いセールス力を発揮します。
ローボールテクニックとは?
車販売の例で解説します。
あるお客にお買い得な値段を示します。それは競合店より、4万円も安い。一旦、購入の決定がなされると様々な活動によってお客のコミットメント、つまり一貫性の感覚が強められます。
- 何枚もの購入契約書にサインする
- 保険加入の契約書にサインする
- 長期の融資が設定される
ここまできて問題が発生します。上司によって計算ミスが発見されるのです。正しい計算だと、4万円上乗せしないと、店舗が赤字になるとのこと…。
上司:「これでは赤字になるので、販売キャンセルをお願いします」
お客:「え…そうなんですか…。」
部下の販売員:「申し訳ございません…。しかし、あとたったの4万円を上乗せすれば車は購入できます。4万円足しても競合店と同じ値段です」
販売員は、あとたったの4万円を上乗せすれば買えることを強調します。かつ、4万円足しても競合店と同じ値段であるとも言います。
最後のひと押しがこちら。
「お客さまがお選びになったのですから」
意識しないと気づかないですが、スマホ販売では常習テクニックですよね。あとは航空券販売やホテル予約でもよくある話だと思います。
コントラストの原理
高価なものを先に見せたほうが、多くの利益があがるという原理。
スーツとセーターを買おうとしている客の例です。まずは値段の高いスーツから売ります。そうすると、高い金額を払った客は、例えちょっと高価な7,000円のセーターでも躊躇せずに買いやすい傾向があります。
不動産業界が使う『セットアップ』とは?
ある不動産会社は顧客に見せる物件リストの中に高い値段をつけたボロ屋を追加します。ボロ屋を客に売ることはありません(売れないので)。ボロ屋は、見せるためだけにあります。
不動産会社によると、このボロ屋を見せた後に本当に売りたい物件を見せると、お客の目が輝くそうです。
僕の体験談:MacBookProを買おうと思っていたら…
Web業界だと、ECサイトによくみられる例でもあります。
アップル信者の僕は新しいMacが発売されたらすぐに欲しくなります。先日、アップルのWebサイトで注文処理を進めていたのですが…。
新しいMacbookProを探して、カートに追加しました。その後に、次のページに進んでみると…。
「あなたのMacBookProのために用意しました」
そんなこと言われたら、追加で買っちゃうじゃないですか!もちろん、冷静に貯金残高を確認しつつ購入はストップしましたが…。
返報性の原理
相手に借りがあるという気持ちを持っていると、普通では断るような要請を受け入れてしまう原理。
クリシュナ(宗教団体)の例
返報性の原理をうまく使ったハレー・クリシュナ協会は恐ろしいほどの成功を収めました。膨大な経済的利益を獲得し、それが寺院・事業・建物などを所有する資金となり、アメリカ国内と外国において100箇所以上の協会支部を持っています。
具体的な方法はとてもシンプル。狙いをつけた人に本や花を「プレゼント」として渡します。
「これはあなたへの贈り物なのです」
受け取った人は要らないといっても返すことができません。その後、信者たちは協会に寄付金を提供するように要請します。
たったこれだけ。
また、プレゼントとして贈られた本や花はゴミ箱に捨てられることが多いです。それを知っているクリシュナ(宗教団体)は、ゴミ箱から本や花を拾い、再利用していたとのことです。
まとめ:知っていることに価値はない
影響力の武器に出てきた行動心理学の実例をまとめました。
なかには「こんなの知ってるよ」だとか、「あぁ〜言われてみたら、たしかにそうね」という感想があるかもしれません。
しかし、知っているだけでは価値がないと思います。
知っている知識を試して検証する。このプロセスを通して、それがあなたのスキルになり、価値を生むと思います。
最後に、明治維新の精神的指導者と言われる吉田 松陰の言葉を引用します。
「目的のない情報収集はただの暇つぶし」
いいかえれば「目的のない読書はただの暇つぶし」です。暇つぶしが悪いわけではないですが、今回ご紹介した影響力の武器を読むことで、実際の生活でも応用可能だと思います。
気になった方はぜひ手にとってみてください。
影響力の武器
若きウェルテルの悩み